②-4 竺紫の島・つくす働き・生き方

次に成りませる神の名は、

宇比地邇(うひぢに)の神(言霊チ)。次に

妹須比智邇(いもすひぢに)の神(言霊イ)。次に

角杙(つのぐひ)の神(言霊キ)。次に

妹活杙(いくぐひ)の神(言霊ミ)。次に

意富斗能地(おほとのぢ)の神(言霊シ)。次に

妹大斗乃弁(おほとのべ)の神(言霊リ)。次に

於母陀流(おもだる)の神(言霊ヒ)。次に

妹阿夜訶志古泥(あやかしこね)の神(言霊ニ)。

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私たちの存在の由来を見ると、父と母の二つの単元によって出来ていることが分かります。

では心と意識の存在を現わす言葉の存在の父母に相当するものは何でしょうか。

母に相当するものは前章までに述べてきた、言霊のウアオエです。四種の母音です。

そして父に相当するものは本章で述べられる、チイキミシリヒニの天にまします八種の父韻です。妹背の四種ですから母音に対応しています。

生物としては父母、雄雌の二単元で足りていたものを、心は一挙に四つの母音と妹背の八つの父韻とに増えてしまいました。

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父韻と母音について。

古事記は子事記で意識の子現象(言葉)を産む秘密を記したものです。子を産むのに父と母の両方の実在があるだけで、関係が無ければ生まれないように、意識においても関係が無ければ意識現象が起きません。

父が能動的主体的であるように、意識においても父韻がその役割を果たし、母音が受動的客体を受け持ちます。そして両者を取り持つ関係を付ける働きがやはり父韻に載っています。

物が物として動くのは物による作用反作用のせいですから、母音に働くのも父韻にある母音性によります。単に母音が父韻の働きを受けるのではなく、父韻の母音性が母音に作用し、母音が父韻の母音性を受け入れる限りそこに交渉が成り立ちます。

言霊学での有名な譬えです。

『鐘があります。棒で突いてみます。鐘が振動して空気を震わせ、空気中に波動が伝わっていきます。けれどこの波動自体がゴーンという音を立てているわけではありません。この波動が人間の耳に入った時、初めてゴーンという音に聞こえるのです。突かれた鐘は、無音の波動を出しているだけなのです。客体である鐘の出す波動と、主体である人間の認識知性の波動、またはリズムといったものがぶつかって、双方の波動の波長がある調和を得た時、すなわち感応同交(シンクロナイズ)した時、初めて人間は鐘がゴーンと鳴ったなと認識することになります。』

八父韻の母音性について。

父韻は母音に受け入れられるための母音性を同時にもっているので、親韻ともいいイザナギ・イザナミの二神で象徴的に表現されています。

父韻は母音に受け入れられなくてはならないので、自身に母音性を持っていて、その両者が和合する接点が八神に配分されています。

現有性の存在。 宇比地邇(うひぢに)の神(言霊チ T)。

現有性の持続。 妹須比智邇(いもすひぢに)の神(言霊イ Y)。

顕現性の吸着。角杙(つのぐひ)の神(言霊キ K)。

顕現性の吸収。妹活杙(いくぐひ)の神(言霊ミ M)。

置換性の静粛。意富斗能地(おほとのぢ)の神(言霊シ S)。

置換性の伸張。妹大斗乃弁(おほとのべ)の神(言霊リ R)。

開花性の拡大。於母陀流(おもだる)の神(言霊ヒ H)。

開花性の収縮。妹阿夜訶志古泥(あやかしこね)の神(言霊ニ N)。

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詳細。

現有性の存在。 宇比地邇(うひぢに)の神(言霊チ T)。母音の現に有るという性質に対応している。T+う=つ。釣る。

現有性の持続。 妹須比智邇(いもすひぢに)の神(言霊イ Y)。母音の現にあって持続している性質に対応している。Y+う=ゆ。湯。

顕現性の吸着。角杙(つのぐひ)の神(言霊キ K)。母音の過去からの現れに吸着する性質に対応している。K+う=く。組む。

顕現性の吸収。妹活杙(いくぐひ)の神(言霊ミ M)。母音の過去からのあらわれに吸収される性質。M+う=む。結ぶ。

置換性の静粛。意富斗能地(おほとのぢ)の神(言霊シ S)。母音の未来の選択を置換して静める性質に対応している。S+う=す。住む。

置換性の伸張。妹大斗乃弁(おほとのべ)の神(言霊リ R)。母音の未来への選択を置換して伸張される性質に対応している。R+う=る。流。

開花性の拡大。於母陀流(おもだる)の神(言霊ヒ H)。母音の表面に開花して拡大する性質に対応している。H+う=ふ。振る。

開花性の収縮。妹阿夜訶志古泥(あやかしこね)の神(言霊ニ N)。母音の表面に開花して収縮する性質に対応している。N+う=ぬ。縫う。

以上は五十音図ウ段の例。

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八父韻について。

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(一) 宇比地邇(うひぢに)の神。

・ 【言霊 チ】

・ (ウの性質)現有性の存在。

・ 精神宇宙全体がそのまま現象発現に向って動き出す端緒の力動韻

・ 現に在るものがあるとする力動。

・ (チテツトタの力動韻

・ 今-今の働き主体側)

宇は地と比べて近い。天は地と比べて近い。吾の眼の全体感はそのまま相手対象に向ういとなみ・働きをする

宇(いえ、宇宙、心の家、心の全体、人格全部)は地(眼に見えるもの、現実的なもの)と比べて以て近いものだ、天が地と比べて近い。。心全体が地に近いとは、心全体人格全体がそのまま現象となって現れ出てくること。

言霊チとは宇宙全体がそのまま現象となって現れ出ようとする力動韻ということ。ウヒジニが宇宙全体がそのまま現象界に姿を現す韻。一瞬に現象化する力動。地に区比べて近い。決心して飛び出すとき。

精神宇宙全体がそのまま現象発現に向かって動き出す端緒の力動韻。

心の宇宙全体がその時その場で全体を現象化する瞬間の意志の韻。

『以上の母音世界の十の現れ方の最初の父韻は、心の宇宙・家全体(宇・人格)は地に比べて以て近(邇)い、(心全体が地に近い・心がそのまま現象となって現れる)ものを現そうとする力動韻で、言霊チと名付ける。 』

「「現にあるものとして全体(宇)を見ている見方で、思い考えが相手対象(地)に付いて確認(比)する以前にそのままの通り(邇)としてしまう見方の力動韻。」

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(二) 妹須比智邇(いもすひぢに)の神。

・ 【 言霊 イ】

・ (ウの性質) 現有性の持続。

・ 動き出した力動が持続する韻

・ 現にある物がありつづける力動。

・ (イエユヨヤの力動韻

・ 今-今の働き客体側)

すべからく智に比ぶるに近かるべし。智による選択に依らずとも相手対象のなりさまと成る。

「チ」と陰陽・作用反作用の関係。言霊イは現れ出てきた動きの持続する働きの韻。パッと現れたものが弥栄に延び続く姿。須らく智に比ぶるに近かるべし。智に比べで近い。飛び出した後は言霊イ。それは否応なく自分の智恵に頼らざるを得ません。

太刀を振り下ろす瞬間が言霊チなら、振り下ろされた太刀を持つ手がどこまでも相手に向かって延びていく様が言霊イ。

動き出した力動が持続する韻。

持続性の意志の働きの韻。

『次に。須らく智に比ぶるに近かるべしと読め、パッと現れ得られたものが弥栄に延び続く姿で、知識で考えながらしていくよりも智恵による即時的な判断行為が相手側に延びていく力動韻、言霊イ(や行)と名付ける。 』

「次に、知識を取り出し整理比較検討(須)して知識を出し合って(智)行為していくよりも(比)、現れ出た動きの持続の働きに乗ってしまう(邇)力動韻。」

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(三) 【 言霊 キ】 角杙(つのぐひ)の神。

・ 【 言霊 キ】

・ (オの性質)顕現性吸着、掻き進める働き。

・ 体験内容を自我の方向に掻き寄せようとする力動韻・過去を自分方向に。

・ 在ったものを現在に収納しようとする力動。

・ (キケクコカの力動韻

・ 過去-今の働き主体側)

立てた規範をもってその運用に合うように相手対象を引き寄せるいとなみ、働き。

判断力で人が生きるために必要な知識、信条、習慣等々を、角を出すように掻きくって自分の方に引き寄せてくる働きの力が父韻キ。

体験内容を自我の方向に掻き寄せようとする力動韻。

掻き操ろうとする意志の働き。

『天与の判断規範で人が生きるために必要な知識信条習慣等を、角を出すように掻き操って自分の方に引き寄せてくる働きの力動韻で、過去にできあがっている基準(角)を今に押し当てようとする、父韻の言霊キと名付ける。 』

「角は既得の判断規範で相手対象を自分の方に引き寄せ、自分と同じものにしようとする過去を引き寄せ現在にしようとする力動韻です。」

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(四) 妹活杙(いくぐひ)の神。

・ 【 言霊 ミ】

・ (ヲの性質) 顕現性の吸収、掻き集めたものに付こうとする動き。

・ 精神内容の中に己にある自己の体験内容に思いが結びつこうとする力動韻・自分を過去へ。

・ 在ったものに自分を置き換え整理しようと梳く力動。

・ (ミメムモマの力動韻

・ 過去-今の働き客体側)

立てた規範を中心にして相手対象に適合させるようななりさまを探す働き。

自らの判断力によって(杭)、生活をさらに発展させようと世の中の種々の物に結び付こうとする力動。

精神宇宙の中に己にある自己の体験内容に思いが結びつこうとする力動韻。

心の宇宙の中にあるものに真っ直ぐに結びつく働きの韻。

『 今思いつき閃き等突如生き始める意識を判断の基準にして相手対象に結びつこうとする力動韻で、言霊ミと名付ける。』

「生きている印の判断を過去に結び付け、現在を過去において実となるようにする力動韻です。」

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(五) 意富斗能地(おほとのぢ)の神。

・ 【 言霊 シ】

・ (エの性質) 置換性の静粛、拡がりの保存収縮。

・ 精神宇宙にある精神内容が螺旋形の中心に静まり収まる力動韻

・ 現に在るものを静め落ち着かせ調和させようとする力動。

・ (シセスソサの力動韻

・ 今-未来の働き主体側)

大いなる量りの働きの地。選択決着を目指して納めようとするいとなみの識別の土台となる働き。

大いなる量りの働きの地。大きな識別(斗)の働き(能)が土台となるように静まること、。言霊シとは人の心の動きが心の中心に向かって静まり収まる働きの韻。

精神宇宙にある精神内容が螺旋形の中心に静まり収まる力動韻。

螺旋状に求心的に中心に向かって静まる意志の動きの韻。

『次に、大いなる量りの働きの地と読め、大いに安心できる(意富)度量識別(斗)の働き(能)の土台(地)を選択しそこに立ち止まり静まるようにする能動韻で、言霊シと名付ける。 』

「杙の判断があったものとして過去に向かうのに対して、斗(量り・測り)の判断はかくあるだろうという未来の相手対象に向かいますが、自分が大いなる識別・量りの能力を秘める安定した中心の土台になって未来を創造しようとする力動韻となる。」

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(六) 妹大斗乃弁(おほとのべ)の神。

・ 【 言霊 リ】。

・ (ヱの性質)置換性の伸張、保存拡大の拡がり。

・ ある精神内容が宇宙の拡がりに向って螺旋状に発展拡大して行く力動韻

・現に在るものを他者の未来に広め置き換えようとする力動。

・ (リレルロラの力動韻・

・ 今-未来の働き客体側)

大いなる量りのわきまえ。選択識別されたなりさまが繰り返し述べられるような働き。

大いなる量りのわきまえ。人間の識別の力(斗)が心の宇宙の拡がりに向かって何処までも活用されるよう発展伸長して行く力動韻。

ある精神内容が宇宙の拡がりに向かって螺旋状に発展拡大していく力動韻。

心の中をグルグル駆け回りまさに螺旋状に心全体に発展していく動きの原動力になる意志の韻。

『大いなる量りのわきまえ、と読め、選択された識別の土台を大いに述べ伝え、心の宇宙の拡がりに向かってどこまでも活用されるよう発展伸長していく力動韻で、言霊リと名付ける。 』

「大いなる識別の基準判断が未来の事柄に述べ伝えられ、転がり拡がらせようとする力動韻」

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(七) 於母陀流(おもだる)の神

・ 【 言霊 ヒ】 。

・ (アの性質)開花性の拡大、火花の先端にて、表面性。

・ 精神内容表現が精神宇宙球の表面に完成する韻

・ 現に在るものが現在という表面を開顕・開発しようとする力動。

・ (ヒヘフホハの力動韻

・ 過去今未来の全体の働き主体側)

意識内容が自己の表層へと上昇し自己の表面結界を超えて、表面で見つかったものと結び付こうとする働き。

表面に完成する韻。物事の事態をしっかり把握してその言葉としての表現が心の表面に完成する働きの韻。

精神内容表現が精神宇宙球の表面に完成する韻。

言葉として意識表面に完成する原動力となる意志の韻。

『 於母陀流・オモダルは表、面に足るで、表面に完成しようとする力動韻で、言霊ヒと名付ける。』

「心の表面に完成する働きの韻で、心の表面とは各言霊の表面であると同時に組み合わされ結びついた全体の表面、あるいはこれから出てくる意識の全体の表面でもある、心の表面になる韻。」

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(八) 妹阿夜訶志古泥(あやかしこね)の神。

・ 【 言霊 ニ】

・ (ワの性質)開花性の収縮、火花の先端にて、表面性。

・ 物事の現象の種が精神宇宙の中核に煮詰まり成る韻

・現に在るものが成熟において内部中核へ吸引されていく力動。

・ ニネヌノナの力動韻

・ 過去今未来の全体の働き客体側

心の深部(夜)のなりさまの恐れおおさがもの事の原因となるように煮詰まる働き。

あやにかしこき音。心の底の部分に物事の原因となる音が煮詰まり成る韻。

物事の現象の種が精神宇宙の中核に煮詰まり成る韻。

事態か心の中心に煮詰まる根本意志の韻。

『心の表面とは反対に心の中心部、底の部分(夜)に底部に物事の原因となるあやしきかしこき音(ね)が煮詰まり成ろうとする力動韻で、言霊ニと名付ける。』

「心の内部に怪しくも賢い創造意志の原因となるものが凝集煮詰まる韻。」

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