31【言霊ル】 頬那美の神(つらなみのかみ)

30【言霊ス】 頬那芸の神(つらなぎのかみ)

31【言霊ル】 頬那美の神(つらなみのかみ)

頬那芸、頬那美でイメージと言葉が結ばれ、この頬那芸、頬那美の所で実際に発音されます。発音に関係することを示すために「頬」(ほほ・つら)の字が用いられています。頬那芸の言霊スは巣、澄む、住むで動きのない状態、頬那美の言霊ルは流、坩堝で動く状態。双方が霊と体を受け持ち、具合よく行けば、物事はスルスルとうまく進行しますが、両方の中のどちらかが勝ちますと、理解し難くなります。言霊ルの方が勝つと、話に「立て板に水」の弁舌となりますが、早すぎて理解できなくなる場合もあります。言葉の廻しがスムーズで(ル)、しかも適当に間のある(ス)時、名演説となりましょう。

言霊スに漢字を振りますと、主(す)、澄(す)む、巣(す)、州(す)、住(す)む・素(す)・吸(す)う、好(す)き、末(すえ)、廃(すた)れる、……等があります。

言霊ルに漢字を当てますと、留守(るす)、坩堝(るつぼ)、……等があります。

頬那芸(つらなぎ)の神、頬那美(み)の神

言霊ス、ル 前の沫那岐・美、言霊ク・ムで先天活動の内容が言葉と結ばれたものが、この頬那芸・美の二神、言霊ス・ルで言葉として発声されます。発声には口腔の筋肉などが作用しますので、神名として頬(つら)(ほほ)の字が入っている訳です。頬那芸・頬那美と芸と美即ち気と身で霊と体、私と貴方を互いに受け持っています。

言霊スは主(す)・巣(す)・澄(すむ)・住(すむ)・据(すえる)・救(すくう)・州(す)・鬆(す)・吸(すう)・掬(すくう)等に使われ、言霊ルは流(る)・縷(る)・坩堝(るつぼ)等に用いられます。頬那芸、頬那美の働きが程よく調和しますと、言葉はスルスルと淀みなく相手に伝わります。言霊スは静止の姿、言霊ルは動く姿、双方がうまく調和する事によって話はスムーズに運びます。良い弁舌を「立て板に水」と表現しますが、それも留処(とめど)なく流れては相手の理解をそこないます。適当な「間」がなければなりません。流れの中に間があって初めて滑らかな弁舌と言えましょう。

【註】「古事記と言霊」の書では、この言霊スの登場の所で、古事記の冒頭の言霊ウ――ア・ワの宇宙剖判が実はス――ウ――ア・ワである事の説明を附記しています。これに間違いはないのですが、今回の講座ではこの説明を言霊学の最終結論である「三貴子」の登場の後に廻す事とします。