39【言霊ヌ】 野の神名は鹿屋野比売の神(かやのひめのかみ)またの名は野椎(のつち)の神

39【言霊ヌ】 野の神名は鹿屋野比売の神(かやのひめのかみ)またの名は野椎(のつち)の神

鹿屋野比売(かやのひめ)の鹿屋は神屋(かや)のことで、神の家、即ち言葉のことであります。この神は志那都比古、久久能智、大山津見、鹿屋野、と口腔で発音され、空中を飛んでいる状態の中の最後の神、フモハ言霊に続く最後のヌ言霊であります。フで風の如く吹き出され、モで木立の中を進み、山で上空に上がり、そして野の神として平地に下りて来ました。風、木、山、野と自然物の神が続きますのは、口腔から吹き出された言葉が外界という自然の中を飛ぶ事を示しています。そして最後の野の神として平地に下って来て、そこで言葉を聞く人の耳膜をたたきます。たたくので野椎と椎の字が使われます。フモハヌ以後の言霊は十個ありますが、すべて聞く人の耳の中の現象です。

言霊ヌに漢字を当てますと、貫(ぬ)く、抜(ぬ)く、縫(ぬ)う、温(ぬく)い、野(ぬ)、額(ぬか)、糠(ぬた)、脱(ぬ)ぐ、……等があります。

野の神名は鹿屋野比売(かやのひめ)の神、またの名は野槌(のづち)の神

言霊ヌ 鹿屋野(かやの)の鹿屋(かや)は神(かみ)の家(いえ)の意です。これを神名(かな)と呼びます。佐渡の島の真名が口で発声されて神名となり、空中を飛んで大山津見の言葉となり、山が裾野(すその)に下って来て鹿屋野の野に着いた、という太安麻呂独特の洒落であります。野に到って、そこで人の耳に聞かれることとなります。耳の鼓膜を叩くので野槌(のづち)の神と付け加えたのでしょう。

言霊ヌは貫(ぬ)・野(ぬ)・縫(ぬう)・抜(ぬく)・額(ぬか)・糠(ぬか)等に使われます。