う 古事記の百神意訳 1 先天構造

はしがき

これは『古事記』の冒頭からちょうど百神目にいる建速須佐之男の命までを心の原理論の対象とするものです。 それを古事記の本文であるとし、神代の巻を心の運用法原理論教科書として読むものです。その思想は更に遡る事太古には完成していたものです。フトマニ言霊学と言います。

現代までに流布している天皇家の歴史書とする後半部は、上巻の神代の巻をカモフラージュするための付け足しとします。天皇による勅撰の真の目的は、人間世界の心の動き、およびそのその行動規範を原理として記録しておき、時が満ちる後代に備えたものです。その表記法に神を用いましたが、神とはどこにいるか分からない人間世界のあっち側の神のことではなく、心の内に火(か)のごとくに明らかに実(み)と成る心の在り方と働きを指したものです。何故そのような暗喩呪示を用いて心の運用原理を示したかについては、当時は人間社会に物質的条件が熟してなく、赤子に哲学を教えるようなものだからでした。

天皇(古代スメラミコト)の大身心は世界人類を相手にしていますから、世界中が物理的に大身心を適応できる条件となることが必要でした。そのためには全世界が人間的に社会経済的に発展を遂げていなければ、理想の心の用い方を発見しただけでは適応する段階にはありませんでした。古代社会の記録が示すように古代の理想社会はありましたが物質的な発展のない社会でした。物質経済社会の発展は心の動きとは相容れず、物質社会の豊饒さを追求すれば心とは別の法則原理が働き、心は弱肉強食、生存競争、目的のためには手段を選ばない方法に従うようになります。

しかしそのことによって全世界的に物質的条件が整うのなら、数千年間は理想的な心の運用の秘密を隠没しておくことも全世界的には有効なことです。(最近の例では中国の先富論が心を犠牲にして富を築きました。)こうして現代において全世界的な物質的な条件は整いました。世界規模あるいは単一世界と言われるものは至る所の分野で出現しています。ところが金融世界は物質的な豊饒さを印刷された紙と数字表徴で示し、個人の使用する欲望を超えて法人や会社、あるいは0の数で表現するようになってしまいました。自分のしていることが自分を超えてしまい、手の施しようがないのです。

ここに時を同じくして、『古事記』の真の解釈ができるようになり、既得の世界の富の体系と心とを一致させることが可能となりました。

とはいっても二千年続いた心の性向が解説された原理を読むだけで変化するわけではありません。また古事記の秘密を理解したといっても、世界富は歴史的に築いてきた別の少数者の手の内にあります。彼ら自身に富の使い道が分からなくなるほどに競争相手が消滅していることが必要です。古事記は心の原理論とはいっても、歴史として神話として読まされるようになっているので、そうなっているスメラミコトの隠した意図も明かされなくてはなりません。

今暫くは淘汰が続くでしょう。

淘汰の後を主導する思想は古代のスメラミコトしか保持していません。

それを学ぶ道付けが太安麻侶以降大和の日本にだけ用意にされているのです。

例えば伊勢の式年遷宮はその為のものです。唯一神明造りと呼ばれ、唯一つの神の内容が明らかとなるように造られていて全ては「心の御柱」から事が始まるようになっています。その名の通り人間の「心」のことを指していて、神とは人間の事であるという秘密を隠したものです。

(2013年10月)

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古事記の百神意訳 1 先天構造

古事記現代語意訳 (対訳)

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吾の眼(私の意識)と先天構造

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原文 【天地(あめつち)の初発(はじめ)の時、高天(たかあま)の原(はら)に成りませる神の名(みな)は、】

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解読 『心の先天の吾(あ)の眼(め)を付(つ)けて智(ち)と成す心の活動の始まる時、タとカのアの間の心の宇宙五十音図(高天原)に、意識が宣(の)り成立し始めようとして明らかにされる、心の実体(神)を示すために了解された内容は、』

意訳 「私の意識が動き始めて活動を開始する時、心の精神宇宙にできてくる心の実体内容は、」

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先天の実在母音世界

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【天の御中主(みなかぬし)の神。】

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『心の宇宙の中心にあって、全ての意識活動の主人公としての、そういう心の実体で言霊ウと名付ける。』

「自分の心の中で、思う心と思われる相手の統一された全体の主人公としての実体が成り出てくる、このような心の世界は欲望となる。 」(以下四つの主客の実体世界。)

【次に、高御産巣日(たかみむすび)の神。 】

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『続いて、自我を意識して噛み合わさって現象である子音を生ずる主体側で言霊アと名付ける。 』

「次に心の全体は剖判して、思う主体側の働き実体としての相手側に向かい結ぼうとする心となる、このような心の世界は感情の与え手側となる。」

【次に、神産巣日(かみむすび)の神。】

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『続いて、噛み合わさって現象である子音を生ずる受け身側で言霊ワと名付ける。 』

「心の中で思われている客体側の働き実体で、主体側を受け入れ結ばれようとする心に分かれる心となる、このような心は感情の受け手側となる。」

【この三柱の神は、みな独神(ひとりがみ)に成りまして、身(み)を隠したまひき。 】

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『この心の三つの次元世界はそれ自体だけで存在していて他に依存していず、先天構造の内部にだけ存在していて、後天的な具体性を持ったものではない。 』

「未剖判と剖判した後の主体側と客体側の三者はそれぞれ独立した心の世界を形成すると同時に、「道は一を生じ 一は二を生じ 二は三を生じ 三は万物を生ず 万物は陰を負いて陽を抱き」の元となる思想で、相手を分けたから分かることになる。」

【次に国稚(わか)く、浮かべる脂(あぶら)の如くして水母(くらげ)なす漂(ただよ)へる時に、 】

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『心を組(く)んで似(に)せることがまだハッキリしていない、水の上に漂う油のように不安定で、そのため暗気(くらげ)に包まれている時に、 』

「心の宇宙世界の区分が幼く不確定でものの分別がハッキリとしてなく、ものに名前を付けられないので、渾沌として暗黒のうちにある時に、」

【葦牙(あしかび)のごと萌(も)え騰(あが)る物に因りて成りませる神の名は、 】

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『葦の芽のごとく次々と連鎖反応を起こすように吹き出てくる意識上の実体は 』

「アーウウーと言いながらも次々と頭に思い浮かんでは消える時と所を選ばず吹き出てくる意識は」

【宇摩志阿斯訶備比古遅(うましあしかびひこぢ)の神。】

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『霊妙な(うまし)葦の芽(あしかび)のように次から次へと萌え出てくる言葉(男・音子・ひこぢ)の実体(かみ)で、これを言霊ヲと名付ける。』

「果てし無くまた勝手であり、時と処を選んだりして出てくる霊妙な記憶の数々で、過去のものとなっているのにいつまでも緒を引くものの実体、記憶そのものの世界(記憶となっている客体側世界)が出ててきます。 このような心は記憶概念の受け手側となる。 」

【次に天の常立(とこたち)の神。 】

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『次に、大自然(天)が恒常に(常)成立する主体(立)で記憶する側の主体世界で、言霊オと名付ける。 』

「次いで、記憶を成立させている主体側を、自然な状態で常に記憶し関連づける主体側世界の実体が出てきます。 このような心は記憶する主体側となる。」

【この二柱の神もみな独神に成りまして、身を隠したまひき。 】

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『この心の宇宙世界もそれだけで充分独立していて他に頼ることなく存在する世界となる。 』

「この記憶のあった記憶されていた記憶の客体世界も、記憶し記憶をもたらす記憶の主体世界も、それ自体で十分独立していて他に頼ることなく存在する世界です。」

【 次に成りませる神の名は、国の常立(とこたち)の神。】

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『次に現れる心の実体の名は、組んで似せること(国)が恒常に(常)成立する(立)ためのどう扱うかの選択が現れてくる宇宙の実体(神)で、これを言霊エと名付ける。』

「次にどう扱うかの選択の世界になります、今後の世界の創造に係わり常に立ち続けることができる実践智の選択肢を扱う世界です。 このような心は選択する主体側となる。」

【次に豊雲野(とよくも)の神。 】

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『次に、先天構造を構成している言霊の基本数十四(トヨ・豊)が組まれ(クモ)実践智の現れる分野(野・道徳政治分配按配)で、言霊ヱと名付ける。』

『次に選択することは選択されるものにそれだけのものがあるということですから、選択されるもの方から見れば元々、十の現れ方をしてその性質を示す四つの世界を提供していることになりその全体の実体となる。』

「意識の現れは能動的な主体意識と受動的な客体意識(アとワ)の元に、ウアオエの四つの次元世界を十の現れ方の性質を組み込む(クモ)ことで成り立つ、その成り立ちの選択を与える実体。 このような心は選択の受け手側となる。」 」

【この二柱の神も、独神に成りまして、身を隠したまひき。 】

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『この二つの意識もそれ自体は現象となって姿を現すことはない。 』

「この選択する心と選択される心もそれ自体としてあり、現象以前のものです。

以上今現在の実体世界・七神(主客をまとめると四)

以下今現在の働き世界・十神(計で豊・トヨ・十四)」

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先天構造の働き世界

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【次に成りませる神の名は、宇比地邇(うひぢに)の神。(以下十の現れ方の元となる働きの世界。父韻。) 】

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『以上の母音世界の十の現れ方の最初の父韻は、心の宇宙・家全体(宇・人格)は地に比べて以て近(邇)い、(心全体が地に近い・心がそのまま現象となって現れる)ものを現そうとする力動韻で、言霊チと名付ける。 』

「「現にあるものとして全体(宇)を見ている見方で、思い考えが相手対象(地)に付いて確認(比)する以前にそのままの通り(邇)としてしまう見方の力動韻。」(チテツトタの力動韻・今-今の働き主体側)

【 次に、妹須比智邇(いもすひぢに)の神。】

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『次に。須らく智に比ぶるに近かるべしと読め、パッと現れ得られたものが弥栄に延び続く姿で、知識で考えながらしていくよりも智恵による即時的な判断行為が相手側に延びていく力動韻、言霊イ(や行)と名付ける。 』

「次に、知識を取り出し整理比較検討(須)して知識を出し合って(智)行為していくよりも(比)、現れ出た動きの持続の働きに乗ってしまう(邇)力動韻。」(イエユヨヤの力動韻・今-今の働き客体側)

【次に、角杙(つのぐひ)の神。 】

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『天与の判断規範で人が生きるために必要な知識信条習慣等を、角を出すように掻き操って自分の方に引き寄せてくる働きの力動韻で、過去にできあがっている基準(角)を今に押し当てようとする、父韻の言霊キと名付ける。 』

「角は既得の判断規範で相手対象を自分の方に引き寄せ、自分と同じものにしようとする過去を引き寄せ現在にしようとする力動韻です。」(キケクコカの力動韻・過去-今の働き主体側)

【次に、妹活杙(いくぐひ)の神。 】

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『 今思いつき閃き等突如生き始める意識を判断の基準にして相手対象に結びつこうとする力動韻で、言霊ミと名付ける。』

「生きている印の判断を過去に結び付け、現在を過去において実となるようにする力動韻です。」(ミメムモマの力動韻・過去-今の働き客体側)

【次に、意富斗能地(おほとのぢ)の神。 】

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『次に、大いなる量りの働きの地と読め、大いに安心できる(意富)度量識別(斗)の働き(能)の土台(地)を選択しそこに立ち止まり静まるようにする能動韻で、言霊シと名付ける。 』

「杙の判断があったものとして過去に向かうのに対して、斗(量り・測り)の判断はかくあるだろうという未来の相手対象に向かいますが、自分が大いなる識別・量りの能力を秘める安定した中心の土台になって未来を創造しようとする力動韻となる。」(シセスソサの力動韻・今-未来の働き主体側)

【次に、妹大斗乃弁(おほとのべ)の神。 】

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『大いなる量りのわきまえ、と読め、選択された識別の土台を大いに述べ伝え、心の宇宙の拡がりに向かってどこまでも活用されるよう発展伸長していく力動韻で、言霊リと名付ける。 』

「大いなる識別の基準判断が未来の事柄に述べ伝えられ、転がり拡がらせようとする力動韻」(リレルロラの力動韻・・今-未来の働き客体側)

【 次に、於母陀流(おもだる)の神。】

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『 於母陀流・オモダルは表、面に足るで、表面に完成しようとする力動韻で、言霊ヒと名付ける。』

「心の表面に完成する働きの韻で、心の表面とは各言霊の表面であると同時に組み合わされ結びついた全体の表面、あるいはこれから出てくる意識の全体の表面でもある、心の表面になる韻。」(ヒヘフホハの力動韻・過去今未来の全体の働き主体側)

【次に、妹阿夜訶志古泥(あやかしこね)の神。 】

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『心の表面とは反対に心の中心部、底の部分(夜)に底部に物事の原因となるあやしきかしこき音(ね)が煮詰まり成ろうとする力動韻で、言霊ニと名付ける。』

「心の内部に怪しくも賢い創造意志の原因となるものが凝集煮詰まる韻。」(ニネヌノナの力動韻・過去今未来の全体の働き客体側)

追加。 父韻と母音。

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言霊世界を寄せあつめて整理したら五層の意識世界ができました。五元素、五行、五重の塔、五大天使、等の古代に流布された各宗教の思想の元はスメラミコトによってそれぞれの教祖に授けられたものです。しかし、そこでどのような世界思想宗教を見ても、父韻の解説はないのです。宗教は現実問題に何の力もないように作らされているのです。整理して結ばれた枠の範囲で勝手に動く能動韻の世界が示唆されているだけです。

これが今後の基礎となるようになっていますからそこから始めます。

アメ。

ものを聞く見る等の始まりは、古事記によれば十七の先天構造の吾の眼が着くことから始まります。雨が降りだせば全てに付き濡れます。私の何にでも付く意識である吾の眼と同じで、全ての人や事物の頭上に分け隔てなく付いたく天(アメ)とも同じです。

ウアワヲオエヱ。

付いた最初の現れは、付いたという自他の区別の無い直接感情(ウ)です。私が付いたのか私に付いたのか分別する以前です。続いて直ぐに自分が相手に付いたという自他の剖判感(アワ)になります。付けば何に付いたのかと概念知識が出てきて(ヲオ)、これから何に付こうかと選択(エヱ)されます。そしてそこに付き方の相違が父韻によってでてきます。

チイ(う)・キミ(をお)・シリ((えゑ)・ヒニ(あわ)。

自他の区別の無い直接感情(ウ)を表すのがチイの父韻です。チ(T)のそのまま現す能動韻とイ(Y)のそのまま持続する直接今が現れる能動韻です。

付いたものが何であるかの概念記憶(ヲオ)を自分に引き寄せるのがキ(K)の父韻で、相手側に結び付くのがミ(M)の父韻です。過去知識を今にもたらすか、今を過去に結ぶかです。

ではこれから何に付こうかと選択(エヱ)されるときに自分を判断の地盤とすると父韻シ(S)の働きとなり、それを拡げようとするのが父韻リ(R)になります。今の手持ちを未来に向けるか、未来に流布するかです。

すると直ぐに自分が相手に付いたという自他の剖判感(アワ)をもたらし、自他の表面に充足を得るようにするのが父韻ヒ(H)であり、心の相手側に煮詰めていく能動韻が父韻ニ(N)です。自分の表面で全体を見通したとするか、自分の内面で全体を見通したとするかです。

さてイザナギが腹這いになって鳴き叫んで研究した父韻の配列です。私たちは戴いて利用する立場ですがそれでもうまく理解できません。

上記にチイキミシリヒニの順にでてきますが、これは心の動きの原理としての順位です。吾の眼が付いて智に成る瞬間の意識の動きですから、ものが欲しい、事を考えてみるという現象を扱う時とは違います。現象を扱う父韻の配置はもっと後から出てきます。

ここではいわば、ウが出てくる瞬間です。

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心の本体。以下二神は心の本体でここから出てここに戻り全てに参与する

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【次に、伊耶那岐(いざなぎ)の神。次に、妹伊耶那美(み)の神。】

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『いざと発動して、名の気と名の実でもって、お互いにいざなぎ誘い合って名を付ける、精神意識の根本的な原動力で、言霊イと言霊㐄と名付ける。』

「上記七神の実体母音を意識確認し、自らは父韻の八神に展開して:母音父韻を結びつけることで現象子音を創造し、生み出された現象を現す名を付ける根源韻となる。」(イ㐄の創造意志が実体世界を確認するとウアワヲオエヱになり、自らはチイキミシリヒニに展開する。)

先天の言霊十七神の構造

ワ -------- ア

ヲ -------- オ

ウ -------- ウ

ヱ -------- エ

㐄 ニヒリシミキイチ イ

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おのれの心の締まり ・ 先天構造が活動主体である人間の頭脳に載る

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【ここに天津神諸(もろもろ)の命(みこと)以ちて、 】

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『人間の心の先天構造である十七の言霊が活動を開始して 』

「人間の心の根源要素は上記の十七しかなくその実体のあり方と生き方の全体が働きを始めて 」

【 伊耶那岐の命伊耶那美の命の二柱の神に詔りたまひて、 】

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『先天十七の言霊が揃うことで動き出し、二柱がイザと立ち上がり』

「イザと立ち上がる前に先天の実在と働きが揃うことで、心のギ・ミの命の働きを喚起して」

重要な注意。古事記による心の原理論では、心の主体(自我や主観や自分とか)の前に先天構造を提起しているということ。

【 「この漂(ただよ)へる国を修理(おさ)め固め成せ」と、】

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『まだ現象となっていない先天十七の要素を用いて確固たる現象を創造しなさい、と』

「創造された現象(子)の世界からの見方だが、ここでは先天の構造要素があるだけで現象がまだない。そこで不安定な先天構造要素の国(クニ・組んで似せる)を人間世界で安定した組み合わせにして造ることが求められる。」

注意。直接現象を造ることではなく、現象を造る主客の構造実体をまず造ること。言葉を発生して意志を通じ合うには、頭脳内の言葉のイメージを物象化して物質に載せ、それを相手に渡して頭脳内で逆方向に解読されていく過程が必要となる。

ここでは創造主体に先天を載せて、主体意識の領域を造ろうとしている。

【天の沼矛(ぬぼこ)を賜ひて、言依さしたまひき。】

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『矛は両刃の剣で、舌を出した形をしていて言葉を発するということ。』

「まず主体の働きとなるものを準備する。言葉の発声器官である口は何故顔の中央にあるかについては誰も解答できないように、舌を動かして言葉を発するのは天の沼矛から来たものであり、それは、沼(ぬ)は言葉を縫うことに通じ、矛(舌)で貫くことで霊凝(ほこ)を得る(十七神を舌に載せる)ことになります。」

【かれ二柱の神、天の浮橋(うきはし)に立たして、】

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『先天構造が頭脳に載ることで、心の先天の実体と働き、主と客の両者が先天の働きから受ける力動によって頭脳内の働きへと変態します。その後頭脳の働きになり、ギミの命が立ち上がります。』

「次いで主体の働く場所を準備する。先天構造が頭脳に宣(の)る働きを科学的にも神学的にもまだ解決されていませんが、構造的には十七神の生成順による説明ができます。(言霊循環の神秘) ここでの二柱はタカミとカミムスビの神の位置と同じですが、前承する言霊上昇循環によって先天構造を全て得ています。」

【その沼矛を(ぬぼこ)指し下(おろ)して画きたまひ、】

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『働きが始動します。先天から頭脳内の舌に降りてきますが同時に、父韻によって実体母音世界を突き刺す(沼・ぬ)ことで、母音世界を全部引き受け入れ(掻き入れ)ることでもあります。』

「そして主体自体の働きが始まる。私の意識が時処位を得ようとし、実際には舌を使って音を色々に出してみて自分の意識に似た音を掻き回して探します。イの言霊をチイキミシリヒニに展開してアオウエ次元に差し込み掻き回して子音を得ようと㐄に渡る道を探します。」

【塩こをろこをろに画き鳴(なら)して、】

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『塩は四穂(霊・しほ)で四つのウアオエ言霊母音、潮時の機(しほ)を掴む適宜な父韻の働きのことでもあり(汝は地の塩なり)、四母音次元を八父韻で掻き回し心と発音の一致を探します。こをろこをろは子を降ろす現象を降臨する。』

「母音世界はありっ放し鳴りっ放しで一般性共通性を示します。そこに機と個別性を持ち込むのが八父韻です。これによって心の現れが確保されていきますが母音の一般性を基盤としています。四母音に対して八父韻が絡み合い三十二の子音が出来てきます。」

【引き上げたまひし時に、その矛の末(さき)より垂(したた)り落つる塩の累積(つも)りて成れる島は、】

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『島は締まり・領域。先天構造が心の領域に移され心の働く場が確保されます。』

「先天の宇宙が全て乗りうつらねば心の働きもありません。宇宙は今ある姿とこれからある姿も含まれますから、言葉による対応もそれに応じていきます。これからあるだろう名付けられるだろう物事も同じ次元同じ範疇の中で表現されるためには、母音世界の一般性を基盤として表現されます。」

【これ淤能碁呂島(おのごろ)なり。】

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『おのれのこころの島・己の心の締まり。』

「単に己の心があるということではなく、己の創造行為によって相手対象に対応している心の物事を得たということです。音の心の島とも読め、音の一つ一つが心の一つ一つの部分に対応していてそれぞれが独立個別の締まりをもっている。」

【その島に天降(あも)りまして、天の御柱を見立て、八尋殿(やひろどの)を見立てたまひき。 】

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『自己領域内で活動の中心となる実体世界(天の御柱)と活動(八父韻)によって、発展伸長する自我の殿(宮)の核ができます。』

「先天構造が頭脳内の活動場に乗りうつり(心の高天原が完成しつつある)全部揃ったところで、自己である主体の活動規範を打ち立てます。」

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現象創造へ・一般共通性の創造から個別性へ

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【ここに、その妹(いも)伊耶那美の命に問ひたまひしく、「汝(な)が身はいかに成れる」と問ひたまへば、答へたまはく、「吾が身は成り成りて、成り合はぬところ一処(ひとところ)あり」とまをしたまひき。】

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『そこで自分の活動の条件が揃ったので、自分に見合う相手を探し相手の特徴を問います。汝が身は言霊上の構成構造の特徴で言えばどうなっていて、成れるというのは発声発音上はどう「鳴る」のかと問います。問われたミの命は実体実在の特徴としては、そこにいつも在り有り続けるだけですから、一度発音されたのなら鳴り鳴りて鳴り止まない事を自分の特徴として答えます。』

「そこで有りて在るだけのイザナミの母音実在世界に問います。有りて在るだけの構造世界はどうなっているか。私はただ有りて在り続けるだけの世界で、発音で言えば一度発声され開始されればその発音に変化は無く同じ母音がづっと続きます。ですので私を見初めその時点での姿、現在の姿を見たければ、私の成り合わぬように続く処を断ち切り閉じ流れを中断して、その時処位での私を現してもらわねばなりません。」

【ここに伊耶那岐の命詔りたまひしく、「我が身は成り成りて、成り余れるところ一処あり。】

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『主体側の創造意志であるギの命(各人我々のこと)はミの命の言うことを了解し、答えます。私の創造意志たる霊は見えませんが、その働きは見える身となり身を動かし働きます。発音上のことで言うなら意志の言霊イは見えませんが、自分の言霊イの展開したイ段の身であるチイキミシリヒニ(TYKMSRHN)の物象を伴っています。(腹の動きから気道声帯鼻口まで、およびそれに応じた空気の濃淡による発声と発音の受領による感覚意識等。)それは主体内に元々あるもので意志の発現と同時に現れますが、意志にくっついているだけのもので、八つの独自の違いを持って鳴り響くはずのものです。しかしそのままでは今はあなたの身は成り成りて未来永劫に続くだけです。それに対応する私を提示しなければ、わたしはあなたを、あなたはわたしをみそめることはできないので、その秘密を開示しましょう。あなたは実体として有り在り続け行きますがそれに対応するのは物理の作用反作用の相互作用と、私の意志の係わりの二つしかありません。

私の意志はあなたの在り続ける姿と同じようにあなたを意識するや否や、かぎり無く時空次元を問わずあなたと係わりを持つことができます。とはいっても、私の意志の働きはその働きを八つの身で表現します。この八つは私の意志の働きの先頭に元々くっついているもので、八つのうちのどれでもあなたの鳴り続ける身に突き刺せば、どの時点においてもあなたの流れを瞬時に留めることができ、そこに瞬時にあなたの現在の姿を写し取ることができます。』

「言霊イは母音行として実体世界に係わり、同時にチイキミシリヒニに展開して働き世界で身を現します。」(まぐわい・婚(よば)いとも同じ構造ですが、物質世界では力の移動、生物世界では欲望の充足の構造しかなく、人間意識の世界では五次元世界が八父韻に展開する世界となって現象子音を創造します。)

【故(かれ)この吾が身の成り余れる処を、汝(な)が身の成り合わぬ処に刺(さ)し塞(ふた)ぎて、】

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『流れ続ける姿を現在に現すためには、私の八種の関所を用いて静止安定した姿を現すようにしましょう。』

「私は意志の言霊イとして時処位を問わずあなたを支えることができ、さらにあなたを現在に現すために八つの関所、例えばアの発声を導くTYKMSRHNの子音頭がありますので、これを使用してみるのはどうか。」

【国土(くに)生みなさむと思ふはいかに」とのりたまへば、伊耶那美の命答へたまはく、「しか善けむ」とまをしたまひき。】

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『クニは組んで似せる。そのことによってあなたの国に在る物事の真実の姿を、組(く)み合わせて言葉として似(に)せた表現ができると思うが、どう思うか。それはそれは物事の真実の姿が言葉となって現れるなんてなんとも結構なことです。』

「国土は自分の心の国で、心は十七神の働きで出来てきたものだから、今度は実際に現象として自分の心の内にクニを造ることになる。心の現象とは何かといえば言葉で表現することですから、物事を言葉に表現した時に、物事の真実の姿が言葉に表れなければ単に物事を指し示すだけのものとなり、心と物の一致を見いだせません。このようにクニとは心の内容を言葉に組んで似せることで、心と事物と言葉(主・客と現象、ミコト)が一致した言葉のクニを言います。」

【ここに伊耶那岐の命詔りたまひしく、「然らば吾と汝と、この天之御柱を行き廻り逢ひて、美斗(みと)の麻具波比(まぐはひ)せむ」とのりたまひき。】

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『天の御柱は先程の先天構造が頭脳内に乗り移った時に出来た主体の活動規範の相手となる五次元層の実在世界。吾と汝は主体側(ギの命)と客体側(ミの命)、 美斗(みと)は吾と汝の共通の身(み)を取(と)る共通の母音世界のこと、麻具波比(まぐはひ)は間(ま)の食い合い、お互いに共通の間を食い合う事で、まず両者の共通項を一致させ同じ地盤に立とうではないかという事』

「言霊イの創造意志によって客体と主体の交じ和える共通基盤を探すことで、鳴り続ける母音実在世界に対しては、関心を寄せ続ける意志の世界が対応する。頭脳内において意志の世界が関心を寄せ続けることで母音世界が成り立つ両者の接点が得られる。意志世界は同時に父韻世界として成り成りて在り続ける世界を切り込み、八つの様態に今現在を出現させる原動韻ともなっている。こうして母音父韻の間を食い合うことで子音を創造するということになる。

ところがミの命側は父韻側の八つの切り込みを受け取るだけで、自らは選択できずに父韻に任せられている。」

【かく期(ちぎ)りて、すなはち詔りたまひしく、「汝は右より廻り逢へ。我は左より廻り逢はむ」とのりたまひて、 】

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『右より廻れとは、客体側のミの命は右(ミキリ・身切り)として自身の柱である母音行を身切りすると同時に、各段を八つに身切りさせること(受動側)。我は左よりとは、主体のギの命は母音行に霊(ヒ)を足らすと同時に、各段に八つの霊(ヒ)の足りた子音を創造するための力動を与えること。』

「この段落を柱信仰にしてしまうと柱の向こう側で二人が落ち合いコソコソする意味になってしまい、主客の分かれた五十音図表の意味が取れなくなる。眼目は働きが実体に係わる原理のことで、客体ミの命側は自分では身切りをできないが受動的な実体として八つに分割できて、それを主体側は自身の能動行為によって意識に反映していくということ。」

【約(ちぎ)り竟(を)へて廻りたまふ時に、】(ところが、、、)

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『ちぎりは約束事で、契約なり合意なりで決めたことで創造すること、』

「決め事で両者の間に成り立つのは共通の利益や有用性で、物事の真実の姿を了解し合うものではなく、言葉においても名付けるときに当事者間の合意や強制義務で現すだけになる。大和の日本語(イザナギ)は真実の物の姿を表現しようとするもので、指し示した言葉の両者間の合意を目指すものではない。ここに世界唯一の大和言葉が出来ていく。」

【伊耶那美の命まづ「あなにやし、えをとこを」とのりたまひ、後に伊耶那岐の命「あなにやし、え娘子(をとめ)を」とのりたまひき。おのもおのものりたまひ竟(を)へて後に、その妹に告りたまひしく、「女人(おみな)先だち言へるはふさはず」とのりたまひき。】

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『ここに創造行為の二種がある。一つは一般共通性を取り両者の利益とすることでその場合の成立が述べられる。他方は両者に事物の真実の姿として現れるものが述べられる。創造される子音の発音で言えば例えばタカマハラはTaKaMaHaRaとなり、それを母音を先に発音して、aT、aK、aM、aH、aRでは子音が成立しないで、一般共通性の母音が出来ているだけになる。女人先立ち言えるはふさわしくないです。』

「母音を先に発音するには幾つかの根拠がありその一つには、その次元における世界的な共通性を持ち合うことがあります。共通の地盤を確認し合えるためには必要なものです。次いで各人の意識の動きの初めは感情による全体印象の取得から始まるので、まずは全体を表出してしまいます。そして意識はあったものの世界を取り入れることで実在現象の意識が出てくるので、その延長として実在全般があるものとして初めに位置させていきます。

その一つの表現として、あなにやしえ男をと言いますが、イザナギを個別的にいい男だねという前に自分の意識の発動全体がここにあることを示しています。」

【然れども隠処(くみど)に興(おこ)して子水蛭子(みこひるこ)を生みたまひき。この子は葦船に入れて流し去(や)りつ。】

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『隠処(くみど)は組む所、この時点では先天が頭脳内に渡ったところですから、頭脳内で言葉が組まれるということです。ヒルコは霊流子、霊が足り(左)ていないので個別的な実相を示さないが、一般共通性を示す重要な表象物(み子)で破壊も消滅もさせられないものです。そこで頭脳活動の重要な前提要素として主客の世界に流布させなければならないものです。葦はたかまはらなやさ言霊五十音図の最初と最後を結んで出来たア・シで、意識構造とその活動の全体という意味で、人の心の全体です。その全体を載せた船は巷に放たれなければならず、こうして一般共通性の介在によって人々の交流がおこります。』

「古代においては母音行を先に操作する思想は大いに発達させられ、中国インドの五行や五大、ヨーロッパの元素の思想とか、アの次元のみ発展させられた各神・各宗教の原理原則があり、現代もこれら霊流子は流布され続けています。」

【次に淡島を生みたまひき。こも子の例(かず)に入らず。】

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『淡島は主体(ア)と客体(ワ)の締まりで、主客に分かれてしまっているところから始るものごとです。次に述べられる正式に生成される子現象ではないので数に入らずです。』

「実相のない葦船が世界に放たれねばなりませんが、その積み荷は既にあったものとしてあれこれに分かれてあるものとして扱う所から始まります。意識にとってはアワ島の領域にあったものを集めるところからしか始めないことになります。巷では知識とか自我とかから始めるように思われていますが、すべて既得の概念教えられた事柄から始めているので、本当の自分から始めたものは何一つありません。以上は実相のない一般性から始めたことから起きました。」

【ここに二柱の神議(はか)りたまひて、「今、吾が生める子ふさわず。なほうべ天つ神の御所(みもと)に白(まを)さな」とのりたまひて、すなはち共に参(ま)ゐ上がりて、天つ神の命を請ひたまひき。】

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『実相の籠もった子音を生もうとして母音を先に発音したために子音を生めなかった。一般的にあること共通していることから始めても子音が出来なかった、あったものあるものの世界から始めてもうまくいかなかった。先天十七神の原理があるのに適合することができないのはどうしてか。御所(みもと)に戻ろう。御所は住居ではなく身元で、元々の初めのところで先天原理を検討し直すこと、アワに分かれる以前の言霊ウの御中主の次元で再検討してみようということ』

「わたしとあなたに分かれる以前は、やはり先天の十七神に分かれているよう見えるが、それは一丸となっておりここからしか問題は出てこない。」

【 ここに天つ神の命以ちて、太卜(ふとまに)に卜(うら)へてのりたまひしく、「女(おみな)の先立ち言ひしに因りてふさはず、また還り降りて改め言へ」とのりたまひき。】

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『太卜(ふとまに)はフトマニ原理のことで占いではない。フトは二十、マニは真似て似せること。

対になった父韻の能動主体側の四つ(チキシヒ)が心の五次元層世界(心の御柱)に係わることで二十の能動主体側の子音が生じて、対になった受動客体側の子音を伴い五十音図のワ行へ渡ることで現象子音が生まれる。この四×五(父韻×母音)の働きが人としての在り方を造る。人とはこの二十となった現象子音を用いてワ行へ渡ることである。(伊勢の遷宮はこれを記念してある。参拝の二柏手、十本指で二回、も同じ。) 女が先に言うというのは御中主(う)、高御産巣日(あ)を無視してしまったこと。』

「御所(みもと)に戻ると世界エネルギーの充実した巣(す)があるので、そこでの精神規範を活用することにする。先天の原理によれば分かれてしまったワの前にウ・アがあるので、そこからやり直さなければならないことを言われる。」

【かれここに降りまして、更にその天の御柱を往き廻りたまふこと、先の如くなりき。

ここに伊耶那岐の命、まづ「あなにやし、えをとめを」とのりたまひ、後に妹伊耶那美の命、「あなにやし、えをとこを」とのりたまひき。かくのりたまひ竟へて、御合いまして、】

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『先天からオノコロ島に降り直して、古事記の冒頭を辿り直して、身元たる天の御中主(言霊ウ)から主体の働きである言霊ア(天の御中主)の出現とその発展伸長に沿って、能動側の動きに従うとまず、全体の主体側判断たる感情感覚による自己主張が初めに来る。 「あなにやし、えをとめを」という感情判断意識は相手対象に向かうとき、その意志の続く限り相手を自分の対象とし相手の成り鳴り続けることを受け止め、同時に自分の主体意志の八種の父韻を埋め込むことになる。そこで相手対象(母音世界)の確認が得られれば、御合いが始まる。身を合わすこと、母音次元層と父韻の 「あなにやし、えをとめを」の位相を合わし、 一般共通性の上で父韻独自の係わりを当てはめていくことになる。』

「逆に言うと、父韻の働きがあっても働きだけが直接実体に向かうことは出来ないので、父韻は自分を相手対象の実在実体に沿うような物象化されることが必要となる。 それが「あなにやし、えをとめを」 の言葉で表現されている。ア名に良いように、エの選択を留め押す、と読め、母音次元層たるイザナミの名の実体と合うようにイザナギ自身の父韻の選択をする、ということになります。こうしてそれぞれの間を食い合い身を合わすことで現象子音が生じてきます。

これで子音創造の主体側の準備ができましたが、子音を創造する過程での客体側の用意がまだできていないのでそれを島(領域)として創造していきます。」

【かくのりたまひ竟(お)へて、御合いまして 、】

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『例えば目的地へ往くには各地点での状況領域に乗っていなければなりません。出発地があって出発する意志があってから始まり、道路状況交通領域をクリアして目的地がそこになければなりません。言葉の発生・人の意志行為・吾の眼を付けて智となすも同様です。

古事記はほんの一瞬を通過するのに十四の根本的に異なった領域を設定しています。』

「御合いは、身合い。

男が言って、女が言って、そしてマグアイしてですが、精神上のこととしてどう理解するのかが問題です。

要素は母音と半母音と父韻です。

身合いは、成り余る処と成り合わざる処の身合いです。男女のまぐあいならイメージがし易いですが、ここは子音創生のことに関してですので見当が付きません。

先に産んだ蛭子と淡島は巷に浮遊していますが、これがどう係わるのでしょうか。

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「かくのりたまひ竟へて」は、お互いに好きだよと言い合うことです。何をかといえば、御合いの身をですが、女から見た身、男から見た身のことではありません。それでは別々バラバラになってしまいます。

日月神示はこう言っています。

「ウズメのミコトいるのざぞ。ウズメとは女(おみな)のみでないぞ、男(おのこ)もウズメざぞ、女のタマは男、男のタマは女と申してあろがな。暁(あけ)つげる十理(とり)となりて下されよ、」

この場合には、女に男があって男に女があるということで、「かくのりたまひ」です。では、その中身はというと、

「キがもとざぞ、キから生れるのざぞ、心のもとはキざぞ、総てのもとはキであるぞ、どんな九十(コト)でもキあれば出来るぞ、キからうまれるぞ、。」

で、男も女もその関係も生まれ出てくるのは「総てのもとはキ」というわけです。

ここにトリックがあります。

男も女も総てもキだ、元気にキだ、潜在意識のキだ、、といいますが、男だけのキ、女だけのキでは何も生まないのです。「全てのもとはキ」というだけのことで、元気や潜在意識があるだけでは動けません。

男というキ、女というキ、「身合い」というキ、つまり、共通のキ、「十理」というキが要ります。

男のキは、イチイキミシリヒニヰ の十に展開します。

女のキは、アイウエオワイウヱヲ の十に展開しています。

男は働きで女は実体で共通性はありません。

ここまでは同じ「十」というだけで、身合う為の共通性はありません。

ところが、男がひとたび先に喋れば、女のあ段から一つを選択(「えおとめ」の「え」)することですから(あ段のあいうえおの一つを選択していること)そこにある、あからわの十理を既存の世界としたことです(「えおとめを」の「を」。

なぜなら、働きは実体に載らないと自らを表現できないからで、

男が「あなにやし」と自他ともに共通にしたいところがあるとのりたまっているからです。

「あなにやし」は、吾・汝(わたしとあなた)によしのこと。

(女が先に話すと各段全部を話してしまい一般性となる)

こうして男と女に「たま」があることになります。

女は隠れた「たま」を提供し、男は「たま」で働きます。

「十四の領域。(神々の宝座。言霊百神)

意識行為を起こすための先天領域

1 子淡路の穂の狭別の島運用 意識の始まる前の全体構造。

2 伊予の二名(ふたな)の島 前もって現れてくる全体。

3 隠岐(おき)の三子(みつご)の島 知識と智恵、概念と選択の領域。

4 筑紫(つくし)の島 意識の働きの領域。

5 伊岐(いき)の島 ここから始まってここへ戻ってくる。

意識の後天現象要素領域

6 津(つ)島 先天からイメージ物象化へ。

7 佐渡(さど)の島 物象が言葉表徴と結ばれる。

8 大倭豊秋津(おほやまととよあきつ)島 言葉が移動し相手対象内で了解される。単位要素の完了。

現象の運用領域。

9 吉備(きび)の児島(こじま) 運用要素の整理と初期の運用規範。

10 小豆島(あづきしま) 主体側の運用要素規範。

11 大島(おほしま) 主体側の過去規範を用いた大いなる判断規範。

12 女島(ひめしま) 表現判断規範。

13 知珂(ちか)の島 主観運用をたしなめ反省する規範。

14 両児(ふたご)の島 主客の両世界の統一された自覚的規範。

(注。十四の経過は一瞬であると同時に経過の完了も示す。)

神々の宝座 (島田正路氏による)

【子淡路の穂の狭別の島を生みたまひき。】

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(一) 淡路の穂の狭別の島 ・ アとワ(淡路)の言霊(穂)が別れて出て来る(別)狭い(狭)区分(島) 言霊ウは主客未剖、アワはそこから分れます

天の御中主の神 ウ

【伊予の二名(ふたな)の島を生みたまひき。この島は身一つにして面四つあり。面ごとに名あり。かれ伊予の国を愛比売(えひめ)といひ、讃岐の国を飯依比古(いいよりひこ)といひ、粟(あわ)の国を、大宜都比売(おほげつひめ)といひ、土左(とさ)の国を建依別(たけよりわけ)といふ。 】

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(二) 伊豫の二名島 ・ 二名とはアとワの二音言霊のこと 宇宙剖判で主体アと客体ワに分れます この主と客に分かれることが全ての自覚の始まりです イとヰの現象を創造する働きの予めの区分

高御産巣日の神 ア

神産巣日の神 ワ

【隠岐(おき)の三子(みつご)の島を生みたまひき。またの名は天の忍許呂別(おしころわけ)。】

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(三) 隠岐の三子島 ・ 隠岐とは隠り神、三つ子とは三段目に現われる言霊という意味

言霊オ・ヲ(経験知)、エ・ヱ(実践智)は文明創造上最も重要な精神性能です

天の常立の神 オ

宇摩志阿斯訶備比古遅の神 ヲ

国の常立の神 エ

豊雲野の神 ヱ

【筑紫(つくし)の島を生みたまひき。この島も身一つにして面四つあり。面ごとに名あり。かれ筑紫の国を白日別(しらひわけ)といひ、豊(とよ)の国を豊日別(とよひわけ)といひ、肥(ひ)の国を建日向日豊久士比泥別(たけひわけひとわくじひわけ)といひ、熊曽(くまそ)の国を建日別といふ。 】

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(四) 竺紫の島 ・ 竺紫は尽くしの謎 八つの父韻は言霊イ(伊耶那岐神)の実際活動のリズム 「身一つにして面四つ」の意味は作用・反作用の陰陽一対四組の知性の律の島です

宇比地邇神・妹須比地邇神 チ・イ

角杙神・妹生杙神 キ・ミ

意富斗能地神・妹大斗乃弁神 シ・リ

於母陀流神・妹阿夜訶志古泥神 ヒ・ニ

【伊岐(いき)の島を生みたまひき。またの名は天比登都柱(あめひとつはしら)といふ。】

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(五) 伊岐の島 ・ 伊岐とは伊の気でイ言霊のこと

心のすべての現象はここから現われ出て、また此処に帰っていくのです

伊耶那岐神 イ

伊耶那美神 ヰ

天津磐境 ・ 言霊ウから言霊ヰまで十七個の言霊が全て出揃い、この先天構造図を「天津磐境」(あまついわさか)と呼びます

天津は先天の意 磐境は五葉坂(五段階の言葉の構造)です

この天津磐境が活動して五官感覚で意識することが出来る精神の後天現象が生れます

言霊五母音につきましては中国哲学(易行)では五行の木火土金水とか、仏教では五重塔で仏陀・菩薩・縁覚・声聞・衆生とか、キリスト教ではラファエル・ミカエル・ガブリエル・ウリエル・ルシファーの五大天使の名で示しています

言霊父韻に関しましては、中国の易経に八卦、キリスト教では神と人との間の契約の印の虹として、仏教では仏となる為の守らねばならない八正道等などとして説かれています

【津(つ)島を生みたまひき。またの名は天(あめ)の狭手依比売(さでよりひめ)といふ。】

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(六) 津島 (天の狭手依比売) ・ 津島の津とは渡し場の意 未だ言葉として名のつかない、秘められている区分 先天構造内に起った活動が津島という十言霊の現象を経て、頭脳内で実際のイメージにまとめられ行く過程です

まだ言葉として表現されていない内は全く個人的な恣意であって人間社会に通じることのないものです 先天の活動が言葉の社会、即ち一般社会に出て行く船の発着場という意味で、先天の何か分らない働きが表現された言葉の世界へ出て行く港の意です

大事忍男の神 タ

石土毘古の神 ト

石巣比売の神 ヨ

大戸日別の神 ツ

天の吹男の神 テ

大屋毘古の神 ヤ

風木津別の忍男の神 ユ

大綿津見の神 エ

速秋津日子の神 ケ

妹速秋津比売の神 メ

未鳴、真名とも言います まだ言葉として発せられていない、考えがまとまっていく段階です

別名 天の狭手依比売(あまのさでよりひめ) とは先天の天名(あな)が狭い津島という区分(狭)を通って一つのイメージにまとまるよう手で探ることが秘められている(比売)区分ということです

【佐渡(さど)の島を生みたまひき。 】

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(七) 佐渡の島 ・ 佐渡とは助け(佐)渡す(渡)の意 何を助け何を渡すのかといいますと先天の活動が一つのイメージ化され、そのイメージを誰にどのような表現で伝えたらよいか、が検討されて言葉として表現・発生される処の区分

沫那芸の神 ク

沫那美の神 ム

頬那芸の神 ス

頬那美の神 ル

水分の神 ソ

国の水分の神 セ

久比奢母智の神 ホ

国の久比奢母智の神 ヘ

どんなに立派な心中のイメージであっても言葉として、または絵や記号、詩などに表現しなければ人に伝わることがない心中の発想で終ってしまいます 宗教上の悟りや哲学上の発見も、それが人間の頭脳内のイメージとして捉えられただけでは、表現しない限り真理とはなりません 言葉となって此岸から彼岸に渡されます

真名とも言います

【大倭豊秋津(おほやまととよあきつ)島を生みたまひき。またの名は天(あま)つ御虚空豊秋津根別(もそらとよあきつねわけ)といふ。】

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かれこの八島のまづ生まれしに因りて、大八島国(おほやしまくに)といふ。

(八) 大倭豊秋津の島 (天津御虚空豊秋津根別) ・ 大倭は大和とも書きます すべてが共存調和するという意 三十二個の言霊がこの区分の言霊の誕生によって全部で揃い、それが豊かに明らかに現われる(津)区分(島)という意味となります

音声が空中を飛ぶ言霊フモハヌは「神名」ともいいます 電波、光波でも同じです

声は耳により入って聞いた人の頭脳内で「ああこういうことか」と了解され行動になります その後、言葉は先天宇宙に帰り、記憶として印画されて言葉の循環はここで終ります 耳から入って了解されるまでの言霊は真名です

風の神名は志那津比古の神 フ

木の神名は久久能智の神 モ

山の神名は大山津見の神 ハ

野の神名は鹿屋野比売の神 ヌ

天の狭土の神 ラ

国の狭土の神 サ

天の狭霧の神 ロ

国の狭霧の神 レ

天の闇戸の神 ノ

国の闇戸の神 ネ

大戸或子の神 カ

大戸或女の神 マ

鳥の石楠船の神 ナ

大宣都比売の神 コ

火の夜芸速男の神 ン

別名 天津御虚空豊秋津根別(あまつみそらとよあきつねわけ)といい先天の活動(天津御虚空)が豊かに明らかな音(根-ね)となって現われる(津)区分

火の夜芸速男の神 ン

神名の火とは言霊のこと、夜芸の夜は夜の国、夜見または読みとなります 芸は芸術のことで火の夜芸速男の神とは、言霊を読む芸術(業-わざ)が早く示されている働きということになり 明瞭に文字の事を指しています 真言に「言霊即実相、文字即涅槃」とあり、文字とは言葉が眠っているものという意味で、生きた人間がそれを読むと直ちにその文字の事が実相となって蘇ってきます

【然ありて後還ります時に、

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吉備(きび)の児島(こじま)を生みたまひき。またの名は建日方別(たけひかたわけ)といふ。】

(九) 吉備の児島 ・ 吉く備(吉備)わった初期(児)の締まり(島)と言った意 五十個の言霊を集めて形だけは五十音図としてまとめたけれど、その内容はまだ詳細には確認されていない段階ということです

初歩的では有りますが豊宇気として先天の性質を受け持っているこの五十音の枠結びを天津菅麻(音図)と呼びます 菅曽(すがそ)は菅麻とも書き先天・大自然そのままの性質の音図(すがすがしい衣の意)のことです 例えばこの世に生れたままの赤ちゃんの心の性能の構造といえるでしょう

金山毘古の神

金山毘売の神

波邇夜須毘古の神

波邇夜須毘売の神

弥都波能売の神

和久産巣日の神

の子(豊宇気毘売の神)

【小豆島(あづきしま)を生みたまひき。またの名は大野手比売(おほのてひめ)といふ。】

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(十) 小豆島 ・ 音図上で初めて確認された八つの父韻の締めくくりの区分 八父韻は音図上で小豆即ち明らかに続く気の区分のこと

泣沢女(なきさわめ)とは人間の創造知性の根本の響きのことです 音波、光波の大自然の無音の音(梵音)が視覚、聴覚のリズムとシンクロナイズする時、初めて現象が現われます 泣き沢め(なきさわめ)ぐのは父韻であり人間の創造知性の側の働きであり、その刺激により宇宙である五母音から現象が出て来るという意味であります

別名の大野手比売(おほのでひめ)とは大いなる横(野・貫)に並んだ働き(手)を秘めている(比売)の意 音図においては八父韻は横に一列に展開しています

泣沢女(大野手比売)の神

【大島(おほしま)を生みたまひき。またの名は大多麻流別(おほたまるわけ)といふ。】

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(十一) 大島 (大多麻流別) ・ 大きな価値・権威を持った心の締まりという意 別名の大多麻流別は大いなる(大)言霊(多麻)が流露・発揚(流)する心の区分、ということです

伊耶那岐の命(言霊の原理・法則)が活用する十拳の剣の力(物事を十段階に分けて判断する)を明らかにする作業区分であります

石拆の神

根拆の神

石筒の男の神

甕速日の神

樋速日の神

建御雷の男の神

闇淤加美の神

闇御津羽の神

【女島(ひめしま)を生みたまひき。またの名は天一根(あめひとつね)といふ。】

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(十二) 姫島 (天一根) ・ 八つの神代表音神名文字(八種の文字原理)が心の宇宙の中に占める位置・区分

言葉を文字で表したものを比礼(ひれ)または霊顯(ひら)といいます 枚(ひら)の字を当てることもあります 大山津見の神(言霊ハ)は言葉のことです 山津見の山は八間でこの間に言霊父韻が入り、それが津見(渡して現れる)で言葉が出来ます

女(おんな)は音名で、文字のこと 文字には言葉が秘め(女)られています 人によって文字を読むと直ちに心の中に言葉となって甦ります また神代文字は全部 火の迦具土の神(言霊ン)から現われますから、別名、天の一根と言われます

頭に成りませる神の名は 正鹿山津見の神

胸に成りませる神の名は 淤滕山津見の神

腹に成りませる神の名は 奥山津見の神

陰に成りませる神の名は 闇山津見の神

左の手に成りませる神の名は 志芸山津見の神

右の手に成りませる神の名は 羽山津見の神

左の足に成りませる神の名は 原山津見の神

右の足に成りませる神の名は 戸山津見の神

○ 黄泉国(よもつくに)

【知珂(ちか)の島を生みたまひき。またの名は天の忍男(おしを)。】

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(十三) 知訶島 ・ これよりは言霊学奥義である禊祓の区分となります

知とは知識の事、訶とは叱り、たしなめるの意です

外国の文化の知識をこの段階で言葉の意味がよく分るように内容を整理し、次の人類文明へ吸収する為の準備作業となる段階の働きの区分

伊耶那岐の大神

衝き立つ船戸の神

道の長乳歯の神

時量師の神

煩累の大人の神

道俣の神

飽昨の大人の神

奥疎の神

奥津那芸佐毘古の神

奥津甲斐弁羅の神

辺疎の神

辺津那芸佐毘古の神

辺津甲斐弁羅の神

【両児(ふたご)の島を生みたまひき。またの名は天の両屋(ふたや)といふ。】

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(十四) 両児島 ・ 言霊布斗麻邇の原理は心の要素である五十個の言霊とその運用法五十、計百の原理から成り立っています その要素五十言霊を上の五十音に、運用法五十を下の段にとりますと百音図ができます これを図の上と下が完成した原理として両児の島と名付けました

八十禍津日の神

大禍津日の神

神直日の神

大直日の神

伊豆能売

底津綿津見の神

底筒の男の命

中津綿津見の神

中筒の男の命

上津綿津見の神

上筒の男の命

天照大御神

月読の命

建速須佐男の命

▲▲▲ここまで▲▲