チイキミシリヒニとは

チイキミシリヒニとは。

自我の成立=名を付ける事。

【 ここに天津神諸(もろもろ)の命(みこと) 【08 言霊 チ】 宇比地邇(うひぢに)の神。

【以ちて、 【09 言霊 イ】 妹須比智邇(いもすひぢに)の神。

【伊耶那岐の命 【10 言霊 キ】 角杙(つのぐひ)の神

【 伊耶那美の命の二柱の神に詔りたまひて 【11 言霊 ミ】 妹活杙(いくぐひ)の神

【「この漂(ただよ)へる国を修理(おさ)め固め 【12 言霊 シ】 意富斗能地(おほとのぢ)の神

【成せ」と、 【13 言霊 リ】 妹大斗乃弁(おほとのべ)の神

【天の沼矛(ぬぼこ)を賜ひて、 【14 言霊 ヒ】 於母陀流(おもだる)の神

【言依さしたまひき。】 【15 言霊 ニ】 妹阿夜訶志古泥(あやかしこね)の神

古事記の八父韻の働きによる意味内容(8~15)を、言葉にして自己意識が成立するときの経過を述べたものです。古事記の順番がそのまま言葉の順番となって一文が成立しているのに気付きます。

赤い花をみる、何故赤く見えるか、赤をとるか緑か黄色か自意識は選択に悩んでいる等、で「赤い花」というとき、

五感感覚次元(ウ)では、言葉を使用してませんが、頭脳内では感覚からする了解のためには、ここにあるのは黄色でも紫でもないあれは赤いバラという五感上の無数の確認了解事項が物凄い勢いで頭脳内をかけめぐり、言葉とならない言葉を使用して「あか」を欲していきます。

知識上の次元(オ)では、言葉を扱うのが専門の次元となり、「赤」に関して過去概念、記憶との整合性が言葉の使用で確かめられます。

選択上の次元(エ)では、前次元の了解の上に、自らを処する実践行為の選択が行われ、「あか」を選んでるのに隣にある黄色に手が出ないようにしていきます。

また、感情次元(ア)では、上記のいずれとも違う諸相の中で喜怒哀楽、感動の情動が出てきます。

それぞれの異なった次元世界に自己が成立していきますが、どの次元相においても「あかい」というとき以前の、先天の意識があります。

チイキミシリヒニ、とは

○ チイキミシリヒニの順列は自然な精神意識の成り立ちによって自我が成立する手順を示したもので、 精神意識の成り立ちによって自我が成立する手順を示したものです。

簡単に言えば、普通は自分とか自我とか赤い花とが映画を見るとかいっていますが、赤い花というときの赤い花という言葉以前の成立を示したものです。

自分は、というときの自分以前の成立でもあります。

普段はそんなことは思わず考えず、自分が赤かい花を見ればそのまま赤いといいます。自分といえば自分を指します。チイキミシリヒニはその時の赤い花、自分という言葉の成り立ちではなく、赤い花、自分という意識の成り立ちを原理で示したものです。

どの人間もいつもどの時点でも不問にし無視し、当たり前に言葉使いを始めてしまう、その言葉を使用してしまう意識があります。このときの意識の成立を述べたものです。

いわば、発せられる言葉を探し受け入れる以前の精神内容ということになります。

自分という言葉を使用する以前に、自分の先天世界があります。それはどんなものか先天というのですから、具体化して述べることはできません。具体化して自分とか赤い花とかいった時は、それは後天の具体的な事象を指したものです。

箸を持つには、橋を渡るには、手指、足がなければならないように、発せられる言葉を使用するには、意識のチイキミシリヒニがなければなりません。

このチイキミシリヒニがそれぞれの次元のアの眼となったとき、ウオアエそれぞれの次元を構成していきます。

「ウ」次元での父韻の配列。

○・キシチニヒミイリ・○

あ・かさたなはまやら・わ

「オ」次元での父韻の配列。

○・キチミヒシミイリ・○

あ・かたまはさなやら・わ

「ア」次元での父韻の配列。

ア・チキリヒシニイミ・○

あ・たからはさなやま・わ

「エ」次元での父韻の配列。

ア・チキミヒリニイシ・ワ

あ・たかまはらなやさ・わ

となります。

そしてその後に現象の創造となりますが、まだまだ先の話です。(ほんの今という一瞬のことですが。)

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○ 名前付ける、という天与の性能。チイキミシリヒニという天与の性能。

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例題。自我を立てることが、名を付けることになる経過とはどのようなものか。

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(一) ・ ここに天津神諸(もろもろ)の命(みこと) 【08 言霊 チ-宇比地邇(うひぢに)の神】 (ウの性質)全体性 いとなみ、働き。精神宇宙全体がそのまま現象発現に向って動き出す端緒の力動韻。 宇は地と比べて近い。天は地と比べて近い。吾の眼の全体感はそのまま相手対象に向ういとなみ・働きをする。

・ ここに先天構造を構成するすべての神々が出揃ったので、 」

これを文章通りに解釈しますと「先天十七神の命令によって、……」となります。これでは古事記神話が言霊学の教科書である、という意味は出て来ません。ではどうすればよいか。「神様が命令する」のではなく、「神様自身が活動する」と変えてみると言霊学の文章が成立します。「さてここで先天で十七神が活動を開始しまして……」となります。

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(二) ・以ちて、 【09 言霊 イ- 妹須比智邇(いもすひぢに)の神。】 (ウの性質) 全体性。 なりさま、実体。 動き出した力動が持続する韻。ヤイユエヨの行のイ。

「父韻イとは「父韻チの瞬間力動がそのまま持続して行く力動韻」という事が出来ましょう。」

すべからく智に比ぶるに近かるべし。智による選択に依らずとも相手対象のなりさまと成る。

・ここで先天で十七神が活動を開始しまして……」となります。

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(三) ・伊耶那岐 【10 言霊 キ- 角杙(つのぐひ)の神。】 (オの性質)掻き進める働き。 いとなみ、働き。 体験内容を自我の方向に掻き寄せようとする力動韻

「言霊キ、ミ。昔、神話や宗教書では人間が生来授かっている天与の判断力の事を剣、杖とか、または柱、杙などの器物で表徴しました。角杙・活杙の杙も同様です。言霊キの韻は掻き繰る動作を示します。何を掻き繰る(かきくる)か、と言うと、自らの精神宇宙の中にあるもの(経験知、記憶等)を自分の手許に引寄せる力動韻のことです。これと作用・反作用の関係にある父韻ミは自らの精神宇宙内にあるものに結び附こうとする力動韻という事が出来ます。」 立てた規範をもってその運用に合うように相手対象を引き寄せるいとなみ、働き。

・「 いざと立ち上がり、」

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(四) ・伊耶那美 【11 言霊 ミ- 妹活杙(いくぐひ)の神。】 (ヲの性質) 掻き集める。なりさま、実体。 精神内容の中に己にある自己の体験内容に思いが結びつこうとする力動韻

「言霊ミ。父韻ミは自らの精神宇宙内にあるものに結び附こうとする力動韻という事が出来ます。」 釣りあげた生きた魚をてなづけるように立てた規範に相手対象を適合させるようななりさまを探す働き。

・「いざと立ち上がり、」

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(五) ・ この漂(ただよ)へる国を修理(おさ)め固め 【12 言霊 シ- 意富斗能地(おほとのぢ)の神。 (エの性質) 拡がりの保存収縮。いとなみ、働き。 精神宇宙にある精神内容が螺旋形の中心に静まり収まる力動韻

「言霊シ。意富斗能地は大きな斗(はかり)の働きの地と読めます。物事を判断し、識別する大いなる能力の地という訳です。人はある出来事に出合い、その事を判断・識別する事が出来ず迷う事があります。あゝでもない、こうでもないと迷いながら、次第に考えが心の中でまとめられて行きます。そして最後に迷いながら経験した理が中心に整理された形で静止し、蓄積されます。蓄積される所が心の大地という訳です。この働きから学問の帰納法が生れて来るでありましょう。」

大いなる量りの働きの地。選択決着を目指して納めようとするいとなみの識別の土台となる働き。

・「 先天構造世界の内容はすべて整った。けれど後天現象世界についてはまだ何も手をつけていない。その混沌とした後天の世界に創造の手を加えて、種々のものを創造し、うまくいったか、どうかを調べ、」

「この場合、漂へる国の国とは国家のことではなく、創造して行く一つ一つの物や事のことを指します。 」

この漂へる国とは、先天構造の十七の言霊は出揃ったが、その十七言霊が実際にどんな構造の先天であるのか、またその先天が活動することによって如何なる子音が生れるのか、その子音がどの様な構造を構成するのか、またその子音によって実際にどんな世の中が生れて来るのか、…等々がまだ何も分ってはいない、という様に事態はまだ全く流動的状態であるという事であります。「修理め固め成せ」を漢字だけ取り出しますと、「修理固成」となります。どういう事かと申しますと、「修理」とは不完全なものを整え繕う事、「固成」とは流動的で秩序が定まっていないものに秩序をつけ、流動的なものに確乎とした形を与えることであります。実際にはどういう事をすることになるかと申しますと、宇宙大自然の中にあって、およそ人間の営みに関係するもの一切を創造し、それに名前をつけることによって生活の秩序を整え、人類としての文化を発展させて行く事であります。

前にもお話しましたが、創造というと物を造り、道路や橋やビルを建設したり、芸術作品を創作したりする事と思われています。これ等も創造である事に間違いありませんが、精神内の創造とはそれ等の外に今までの経験を生かし、それに新しいアイデアを加えて物事を創造すると共に、その創り出されたものに言葉の道理に則って新しい名前を附けること、これも大きな創造です。言葉というもの自体から言うなら、この様に新しいものに附けられる名前の発展、これが創造の本質と言うことが出来ます。(この文章のいとなみ、働き側)

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(六) ・ 成せ」と、【13 言霊 リ- 妹大斗乃弁(おほとのべ)の神。 (ヱの性質)保存収縮の拡がり。 なりさま、実体。 ある精神内容が宇宙の拡がりに向って螺旋状に発展拡大して行く力動韻。

「言霊リ。大斗乃弁とは大いなる計りの弁(わき)まえと読めます。意富斗能地と作用・反作用の関係にある事から、心の中にある理論から外に向かって発展的に飛躍していく働きと考えられます。父韻リはラリルレロの音がすべて渦巻状、螺旋状に発展していく姿を表わしますから、父韻リとは心の中の理論が新しい分野に向かって螺旋状に発展し、広がって行く働きであることが分ります。この様な動きの理論の働きは演繹法と呼ばれます。学問ではなくとも、多くの物事の観察から人の心の中に一つの結論がまとまっていく過程、また反対にひとつの物事の理解から思いが多くの事柄に向かって連想的に発展して行く事、その様な場合にこの父韻シ、リの存在が確かめられます。」

大いなる量りのわきまえ。選択識別されたなりさまが繰り返し述べられるような働き。

「 創造したものに適当な名前を付け、整備しなさい、との意味です。混沌とした世界を一つ一つ区切って、言葉の言うように似せること、創造したものの内容・その存在がよく分かるように適当な名前を付け、他のものとはっきり区別出来るようにすることを言います。 」

この漂へる国とは、先天構造の十七の言霊は出揃ったが、その十七言霊が実際にどんな構造の先天であるのか、またその先天が活動することによって如何なる子音が生れるのか、その子音がどの様な構造を構成するのか、またその子音によって実際にどんな世の中が生れて来るのか、…等々がまだ何も分ってはいない、という様に事態はまだ全く流動的状態であるという事であります。「修理め固め成せ」を漢字だけ取り出しますと、「修理固成」となります。どういう事かと申しますと、「修理」とは不完全なものを整え繕う事、「固成」とは流動的で秩序が定まっていないものに秩序をつけ、流動的なものに確乎とした形を与えることであります。実際にはどういう事をすることになるかと申しますと、宇宙大自然の中にあって、およそ人間の営みに関係するもの一切を創造し、それに名前をつけることによって生活の秩序を整え、人類としての文化を発展させて行く事であります。

前にもお話しましたが、創造というと物を造り、道路や橋やビルを建設したり、芸術作品を創作したりする事と思われています。これ等も創造である事に間違いありませんが、精神内の創造とはそれ等の外に今までの経験を生かし、それに新しいアイデアを加えて物事を創造すると共に、その創り出されたものに言葉の道理に則って新しい名前を附けること、これも大きな創造です。言葉というもの自体から言うなら、この様に新しいものに附けられる名前の発展、これが創造の本質と言うことが出来ます。(この文章のなりさま、実体側)

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(七) ・ 天の沼矛(ぬぼこ)を賜ひて、【14 言霊 ヒ- 於母陀流(おもだる)の神。 (アの性質)火花の先端にて、表面性。 いとなみ、働き。 精神内容表現が精神宇宙球の表面に完成する韻。

「言霊ヒ。於母陀流の神を日本書紀には面足尊(おもたるのみこと)と書いており、その意味・内容は更に明らかとなります。ハヒフヘホの音は主として人の言葉に関する音であります。面足とは心の表面に物事の内容表現が明らかに表わされる力動韻という事が出来ます。

かくの如く心の表面にはっきり表現として現われる時には、心の奥で過去のイメージが実を結んでいる、という事になります。」

意識内容が自己の表層へと上昇し自己の表面結界を超えて、表面で見つかったものと結び付こうとする働き。

「 天(あめ)の沼矛(ぬぼこ)とは先天の働きのある矛(ほこ)の意。矛とは剣(つるぎ)の柄(つか)の所を長くした武器のこと。古事記の神話が言霊学の教科書であることを念頭におくと、天の沼矛とは言葉を発する時の舌のことと考えられます。」

沼矛の矛とは両刃の剱に長い柄をつけたもの、と辞書にあります。しかし矛という武器は言霊学と関係がないものです。では矛という言葉を使うのは何故か。文章の前後を慎重に検討しますと、言葉の学問に対して矛とは何を表徴しているのか、それは人間の発声器官である舌の事でありましょう。人の舌の形は矛に似ています。人は舌を上手に使って言葉を話します。けれど舌だけで言葉を話すわけではありません。それは心が動くからです。心が活動して、更に舌が動く事によって、霊と音声が一緒になり、言霊子音を生みます。この現象子音である言霊によって漂へる国を修理固成し、人類の文明創造が行われる事となって行きます。(この文章のいとなみ、働き側)

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(八) ・言依さしたまひき 【15 言霊 ニ- 妹阿夜訶志古泥(あやかしこね)の神。 (ワの性質)火花の先端にて、表面性。なりさま、実体。 物事の現象の種が精神宇宙の中核に煮詰まり成る韻

「言霊ニ。この心の奥に一つの事の原因となるものが煮つめられて行く力動韻、これが父韻ニであります。」 心の深部(夜)のなりさまの恐れおおさがもの事の原因となるように煮詰まる働き。

「この舌を操作して言葉を創造し、その言葉によって後天の現象世界を整備、発展させなさいと命令し、委任した、ということです。」

沼矛の矛とは両刃の剱に長い柄をつけたもの、と辞書にあります。しかし矛という武器は言霊学と関係がないものです。では矛という言葉を使うのは何故か。文章の前後を慎重に検討しますと、言葉の学問に対して矛とは何を表徴しているのか、それは人間の発声器官である舌の事でありましょう。人の舌の形は矛に似ています。人は舌を上手に使って言葉を話します。けれど舌だけで言葉を話すわけではありません。それは心が動くからです。心が活動して、更に舌が動く事によって、霊と音声が一緒になり、言霊子音を生みます。この現象子音である言霊によって漂へる国を修理固成し、人類の文明創造が行われる事となって行きます。(この文章のなりさま、実体側)

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